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コラム

2021.03.29
生前贈与の完全マニュアル!必ず知っておきたい概要と注意点

生前贈与は相続税対策として有効な節税手段であり、生前中に子や孫へ財産を渡すことで、相続税の対象となる財産を減らすことが可能です。
しかし生前贈与は贈与税の課税対象となり、贈与する方法を間違えると多額の税金を納めることになります。
本記事では、贈与税の基礎知識と節税する際のポイントと、注意点についてご説明します。

生前贈与とは?贈与税の仕組みを解説

生前贈与とは、財産を渡す人(贈与者)の生前中に財産を渡す行為です。
生前贈与は贈与税の対象となり、一定以上の贈与を受けた場合には贈与税の確定申告をしなければいけません。

贈与税は財産をもらった人が申告手続きを行う

贈与税の確定申告は、財産をもらった人(受贈者)が手続きを行います。
たとえば親が3人の子へ贈与した場合、贈与税の申告手続きは贈与を受けた子3人です。
また贈与税の申告では、受贈者が1年間(1月1日から12月31日)に贈与を受けた金額を合計します。
そのため子1人が両親から各100万円の贈与を受けた場合、200万円に対して贈与税が課されます。

贈与金額が年間110万円までなら無税

生前贈与を利用した節税の最大のメリットは、基礎控除額110万円を適用できる点です。
贈与を受けた金額が110万円以内なら全額控除されるため、贈与税は発生しませんし、確定申告も不要です。
また110万円の控除は毎年利用できるため、年を分けて贈与すれば何度でも基礎控除額を使えます。
たとえば1度に1,000万円の贈与を行うと、110万円を差し引いた890万円に対し贈与税は課されます。
しかし同じ1,000万円の贈与でも、100万円の贈与を10年間続ければ、贈与税を支払わずに1,000万円の財産を渡すことが可能です。

生前贈与は誰にできるのか?特例を適用する際の注意点

直系尊属からの贈与は税率が低くなる

生前贈与は誰でも行うことが可能ですが、受贈者の年齢と贈与者との続柄によって、適用する贈与税の税率は違います。

<贈与税の税率の種類>
● 一般税率(一般贈与財産用)
● 特例税率(特例贈与財産用)

一般税率(一般贈与財産用)

一般税率は、特例税率に該当しない財産に対して適用する税率です。
夫婦間の贈与や、兄弟間で贈与の場合は一般税率を適用します。

【一般税率の速算表】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

※1,000万円の一般贈与財産に対する贈与税の計算式
1,000万円-110万円=890万円
890万円×40%-125万円=231万円(贈与税)

特例税率(特例贈与財産用)

特例税率とは、その年の1月1日時点で20歳以上の受贈者が、直系尊属(祖父母や父母など)から、贈与を受けた際に適用する税率です。
特例税率は、一般税率よりも税率が低く設定されており、親から子への贈与や、祖父母から孫への贈与時には特例税率で税金の計算をします。
一方で、特例税率は直系尊属からの贈与に限定されているため、叔父叔母からの贈与や子から親への贈与は特例税率の対象外です。
また受贈者の年齢要件は贈与時点ではなく、贈与を受けた年の1月1日時点で判定します。
そのため贈与時点で受贈者の年齢が20歳でも、その年の1月1日時点で19歳の場合は、直系尊属からの贈与でも特例税率を適用できません。

【特例税率の速算表】

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

※1,000万円の特例贈与財産に対する贈与税の計算式
1,000万円-110万円=890万円
890万円×30%-90万円=177万円(贈与税)

贈与税の特例制度は対象者のみが適用可能

贈与税には多くの特例制度が存在し、特例要件を満たせば1,000万円を超える贈与でも、無税で財産を渡すことが可能です。

<贈与税の主な特例制度>
● 配偶者控除
● 住宅取得等資金の非課税
● 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税
● 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税
● 相続時精算課税

特例要件は、受贈者の年齢や贈与財産の使用目的の制限などがあり、たとえば配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦のみが適用できる特例です。
配偶者控除は、最大2,000万円までの自宅や自宅の購入資金の贈与が非課税となる制度で、相続前に配偶者へ自宅を渡したい場合に利用できます。
また教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税は、30歳未満の受贈者が対象の特例です。
最大1,500万円までの贈与は非課税となりますが、贈与を受けたお金を教育目的以外に使用すると、贈与税が課されますのでご注意ください。

生前贈与はどのタイミングで行うのがベスト?

相続税対策目的の生前贈与は早い時期から行うべき

贈与税で最も利用しやすい非課税控除は、110万円の基礎控除額です。
基礎控除額は毎年使えますが、未利用の控除額を翌年に繰り越せません。
そのため贈与税の基礎控除額を最大限に活用するためには、毎年贈与するのがポイントです。
また相続税は亡くなった時点の財産に対して課税されるため、生前中に財産を移せば、その分相続税の対象となる財産は少なくなります。
たとえば3人の子に対し、毎年100万円を20年間贈与した場合、贈与税を1円も支払わずに6,000万円分の相続財産を減らせます。
もし相続税の税率が20%なら、1,200万円分の節税をしたことになるため、生前贈与することで相続税の節税も可能です。

特例制度は適用期間が決まっているので要注意

贈与税の特例制度を利用すれば、1度に多くの金額を贈与する場合でも、非課税で財産を渡すことが可能です。
しかし贈与税の特例は、贈与時期によって非課税控除額が変わる制度や、適用できる期間が決まっている制度もあります。
たとえば住宅取得等資金の非課税制度は、対象となる住宅を契約する時期によって非課税控除額は変わります。
また特例制度の延長は、最終年度の税制改正で議論されるため、適用期間が延長されるかはその時期にならないとわかりません。

【住宅取得等資金の非課税の控除額】
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅
平成31年4月1日~令和2年3月31日 3,000万円 2,500万円
令和2年4月1日~令和3年3月31日 1,500万円 1,000万円
令和3年4月1日~令和3年12月31日 1,200万円 700万円

相続開始直前に生前贈与しても節税効果は薄い

贈与を受けた人が相続財産を取得する場合、相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与財産は、相続税に加算しなければなりません。
また贈与税の基礎控除額以内の贈与も、相続税計算の対象となるため、贈与者が亡くなる直前に生前贈与をしても、節税効果はあまりないです。
なお相続開始前3年以内の贈与でも、以下の贈与税の特例制度を適用した金額は、相続税加算の対象から除かれます。
<相続開始前3年以内の贈与加算から除外される特例>
● 配偶者控除を適用した財産のうち、配偶者控除額以内の金額
● 住宅取得等資金の非課税のうち、非課税適用した金額
● 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税のうち、非課税適用した金額
● 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税のうち、非課税適用した金額

実際に生前贈与を行うにはどうすれば良いか?

生前贈与は財産を渡すだけで成立する

民法では、贈与は財産を渡す人ともらう人が同意していれば成立すると規定されています。
また贈与契約は口頭でも成立するため、財布から取り出したお金を渡せば、贈与行為が成立します。
“民法 第549条(贈与)
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。”

不動産の贈与は登記手続きが必要

不動産の贈与をする場合、登記の名義変更を手続きが完了することで、贈与が成立したとみなされます。
そのため口頭で子に対し不動産を贈与すると伝えたとしても、名義変更せずに相続が発生した場合、贈与は無かったとみなされ、不動産は相続税の課税対象となりますのでご注意ください。

生前贈与をする上で注意すること

税務署が贈与行為を否認する可能性

生前贈与のデメリットは、税務調査の指摘を受けるリスクがあることです。
贈与は、贈与者と受贈者が贈与に同意して成立するため、勝手に財産を渡しても贈与行為は成立しません。
たとえば親が子の名義で預金を積み立てていた場合、子が口座の存在を知らなければ、名義預金になります。
名義預金は、相続税の税務調査で指摘されやすいポイントです。
税務調査を受けた際、贈与が行われた証拠を提示できないと、税務署は贈与行為自体を否認し、名義預金として相続税を課す可能性があります。
そのため贈与契約書など、贈与行為の確認できる物的証拠を残しておくと、税務調査の際に名義預金の指摘を否定しやすいです。

贈与額が110万円を超えた場合には贈与の確定申告手続きが必要

贈与税の基礎控除額110万円を超えた場合、贈与税の確定申告手続きが必要になります。
贈与税の申告期間は、翌年2月1日から3月15日と、所得税の確定申告期間よりも半月早いです。
また申告期限を過ぎた場合、贈与税のほかに加算税・延滞税を支払うことになるため、110万円を超える贈与が行われた際は、確定申告をしてください。

特例制度を利用する場合は必ず期限内に申告すること

贈与税の特例制度を適用する場合、申告期限内に確定申告書の提出が必要です。
特例要件を満たしていても、申告期限までに申告書を提出しないと、特例は一切適用できません。
そのため贈与税の特例を適用する際は、必ず申告期限内に贈与税の申告書を提出してください。

 

 

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